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近藤誠×中村仁一 |
医療は恫喝(どうかつ)産業だ |
宝島 2012年12月より 発行/(株)宝島社 |
<< Profile >>
近藤 誠(こんどう まこと) 1948年生まれ
慶應義塾大学医学部卒業後、同大学医学部放射線科入局。83年から同大学医学部放射線科講師。
中村 仁一(なかむら じんいち) 1940年生まれ
京都大学医学部卒業。財団法人高雄病院院長、理事を経て、2000年2月より社会福祉法人
老人ホーム「同和園」附属診療所所長、医師。
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【不安をあおり患者を増やす】
中村氏は、医療、教育、宗教は恫喝(どうかつ)産業だと思っています。恫喝のしかたはいろいろあり
ますよ。『命がどうのこうの』って言われたら、みんな不安になりますから。医者は恫喝のしかたがうまい
です。
つまり、医者は医療行為という洗面性を盾に“お客”を不安にさせて商売している、というのだ。近藤氏も、
不安産業でもありますよ。不安をあおってファンを増やすと同調する。その“手口”を中村氏が明かす。
「不安をかきたてたら、患者は絶対、来ますからね。治療しなかったらこうなりますよって、不安がらせるし、
脅すし。検診でも人間ドッグでもそうでしょ。10項目も受けたら、どっか具合悪いって言われますよ。
基準値そのものが、健康な人が『95%に入る範囲』で、前後の2.5%ずつは、はずれるんだから。それに
加えてさらにいろいろ、見つかるわけだから。医者は患者を思考停止させた方が繁盛するから、医療の
いい面ばっかり言ってマイナス面は隠して、洗脳するんですね。
検診でなにか見つかった患者が『様子を見ますよ』と言うと、『そんなことをしていて手遅れになったら
どうするんだ』って。結局、自分のやりたい方へ誘導する。自分のすすめる治療のいいことしか言わなくて、
マイナス面は隠すか、小出しにして。だからどうにでもなりますよ。相手は素人なんだから。」
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【早期がん手術で取ったから助かった。の誤り】
「早期発見・早期治療で、がんは治る病気になった」というプロパガンダもウソ八百。近藤氏によれば、
人口に占めるがん死者の割合は、1960年代から変わっていないという。
そもそも『早期発見・早期治療』というのは、完治の可能性がある感染者の結核で成功した手法。
がんに対して『早期発見・早期治療』という言葉を使うと、早く見つければ完治する、という誤解を
与えてしまいますよね。近藤氏は、30年に及ぶ研究と豊富な臨床経験を基に、がんの早期発見には
害しかないと断言する。
「よく『がん検診で早期がんが見つかって、手術できれいに取ってもらったから5年経った今も再発せず
に元気でいる。私はラッキー』という話を聞きますが、本物のがんなら、見つかる以前に転移しています。
なんの害もない『がんもどき』を見つけられ、必要のない手術を受けて臓器を傷つけたのだから、損を
したことになります」
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【がんが痛むのではなく治療で痛む】
がんはひどく痛む。がんにかかったら、最期まで拷問のような苦しみにうめいて死んでいくしか
ない――― たいていの日本人がそう思いこんでいるのではないだろうか。がんが忌(い)み
嫌われる最も大きな理由もここにある。しかし、治療しなければ痛まないがんが、たくさんあるという。
中村氏が実体験を披露している。
「がんを放置した場合は、ぼくが老人ホームで経験した限りでは、実に穏やかに死んでいきます。
強烈な痛みや苦しみを伴うのはがんのせいじゃなく、治療のせいなんだとよくわかりましたよ」
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【がんの9割に抗がん剤は無意味】
日本のがんの標準治療は「手術、抗がん剤、放射線」だ。検診などでがんが見つかると、
手術+抗がん剤、放射線+抗がん剤、または念のため3つ全部をすすめられ、治療に突入する
ことになる。
つまり、患者が黙っていると、もれなく抗がん剤付きの治療を受けるハメになる。手術や抗がん剤
の乱発に待ったをかけるのが近藤氏だ。中村氏との対談ではデータも披露している。
「治療で苦しんでも、メリットがあればいいが。たとえば、乳がんは、リンパ節を取っても生存率が
上がらないことが、1985年までに証明されている。なのに日本ではいまも一生懸命リンパ節を
切り取っています。
米国では早期前立腺がんの患者367人を、いっさい治療しないで15年観察した結果『なにもしない
で様子を見る』、つまり放置治療法が最良という結論が出ています。
(途中略)
また、日本人のがんの9割を占める「固形がん」(胃がんなどかたまりをつくるがん)は、抗がん剤で
治ることはないとし、延命効果さえ「ある」ときちんと証明されたデータがありません。」
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【大学病院は「いい実験」を受けられる病院】
大学病院、国立がんセンターなど「いい病院」のワナもある。中村氏が言う。
「大学病院とか日赤とか国立がんセンターとか、病院のランクが高ければ高いほど『病気の見逃し』は
許されないから、行ったら徹底的に検査されますよね。当たり前の話だけど、ムダな検査をされる。
そして見つけなくていい病気が見つかったりしてしまう。」
近藤氏はさらに過激だ・
「『大学病院はいい病院』じゃなくて『いい実験を受けられる病院』だと思わないと。実験的なことに
すごく力を注ぐようになって、がんという病名がついたらインフォームドコンセントを徹底している。
すると、新薬の実験がすごくやりやすくなるんです。実験すれば製薬会社からもお金が入ってくるし、
それでいま、大学病院の経営は黒字になってます」病院ランキングも、上位の病院ほど治療漬けに
されるリスクが大きい、と注意をうながす。
「手術も放射線も抗がん剤もやろう、みたいなことになって、結局どれも必要なかったんじゃないか、
患者さんが苦しんだだけじゃないかっていうケースがすごく多いので、病院ランキングというのは
あんまり信用しない方がいい」(近藤氏)
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